2026/04/24企業紹介
製造業における競争が激化する中、中小物の多品種少量生産という難題に真正面から向き合う企業がある。それが、モリックス精工株式会社だ。
「モノづくりで社会のカケはし」。この言葉を企業理念に掲げる同社は、工業機械から食品機械、半導体装置まで幅広い業界のニーズに応え続けてきた。多様な素材・形状・ロット数に柔軟に対応できる体制と、現場発の革新マインドが、今日の確固たるポジションを支えている。
今回は、生産管理を担う森下氏に、同社の強みと今後のビジョンについて詳しく聞いた。


多品種少量生産は、製造業のなかでも特に難易度が高い領域だ。製品ごとに異なる形状・素材・精度要求に対応するためには、設備の充実だけでなく、それを使いこなす人材の力が欠かせない。
モリックス精工が誇るのは、まさにその「人の力」だ。
「各現場のプロたちが自ら判断して、最適な工具や加工条件を選定することで、柔軟で高精度な加工を実現しています。生産管理として現場へ工程の指示はしますが、現場が『もっとこうした方が良くなるよ』とアイディアを出してくれる。結果としてそちらを採用することが多くなっていますね」(森下氏)
溶接、各種ボール盤、フライス盤、マシニングセンタ、平面研削まで──、一貫した生産ラインを持ちながらも、現場の技術者たちが主体的に工程を改善していく。この「現場主導の改善文化」こそが、同社の最大の競争優位と言えるだろう。


さらに、フライス盤のT溝を活用した専用治具・装置を多数保有しており、複雑な形状の製品にも柔軟に対応できる環境を整えている。
これほど多種多様な設備を扱いこなすためには、当然ながら高いスキルが求められる。同社が重視するのが「多能工の育成」だ。
「多種の機械を熟知するには長い時間が必要です。ただ、複数の機械を学ぶことで得られるノウハウは非常に多い。多能工を育てることで、あらゆる加工にも柔軟に対応できる高い技量が身についていきます」(森下氏)
同社ではOJT指導を基本とし、製品や工具に関する情報を現場内で積極的に共有。個々の経験と知識がチーム全体に蓄積されるサイクルを構築している。一人ひとりのノウハウが組織の財産となり、それが高品質・短納期を実現する礎となっている。


多品種少量生産において最も難しいのが、品質の安定と納期の厳守だ。製品が変わるたびに段取りが変わり、求められる精度も異なる。それでも同社が顧客から高い信頼を得ているのには、明確な理由がある。
加工時と加工後にマイクロメータやシリンダーゲージで実測した数値を図面に記録。さらに、独自の管理システムで製品ごとの履歴を一元管理することで、品質のトレーサビリティを確保している。
「短納期対応は、見積もり段階から現場と密に情報交換することがポイントです。段取りや加工計画を事前に整えることで、計画的な生産対応が可能になります。現場主体で進めているので日常的に意見交換の機会も多く、お互いにアイディアを出し合いながら、最適な方法を模索しています」(森下氏)


同社の改善活動は、単なるコスト削減にとどまらない。現場の意見を積極的に採り入れた工程見直しが、顧客満足度の向上に直結している。
具体的な取り組みとして、材料・工具の共通化や、類似した段取りの製品を一括加工するバッチ処理などを実施。その成果として、箱型製缶品の加工プロセスにおいて従来比27%の工程時間短縮を達成している。
この土壌を育てたのが、長年にわたる3S活動(整理・整頓・清掃)だ。日々の活動を通じた現場との信頼関係が、作業者が気軽に意見を言える風土をつくり出している。
モリックス精工が手がける分野は多岐にわたる。
| 対応業界 | 工業機械部品 |
|---|---|
| 食品機械部品 | |
| 梱包機械部品 | |
| 半導体装置関連部品 | |
| (医療分野へ拡大予定) |
| 対応素材 | アルミ |
|---|---|
| SUS(ステンレス) | |
| 銅 | |
| 鋳物 | |
| 難削材 |
特に、製缶加工部品や高精度製品については豊富な実績を持ち、難削材を含む幅広い素材に対応できることも同社の強みのひとつだ。


近年、製造業においてもデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進が急務となっている。同社はゲンバトのエンムスビや図面管理サービスを活用し、システム構築費や管理工数の削減に取り組んでいる。
ここで気になるのが、現場からの反応だ。デジタル化に対して現場が抵抗感を示すケースは業界でも珍しくない。 「導入にあたっては、現場の意見や実務上の課題を丁寧に聞き取り、運用方法を一緒に検討しました。導入後も改善提案や要望をその都度取り入れて見直しているので、現場側も自然と受け入れて活用してくれています」(森下氏)
「現場の声を聞く」という同社のDNAは、デジタル化においても変わらない。トップダウンではなく、現場と対話しながら進めるDXが、スムーズな定着を実現している。


顧客とのコミュニケーションにおいても、同社のスタンスは一貫している。定期的な訪問や電話連絡を通じた密な情報交換はもちろん、「出来上がった製品こそが最高のセールスマン」という哲学のもと、製品の品質そのもので信頼を積み重ねてきた。
「お客様からいただくお褒めの言葉は、私たちの大きな励みです。製品を通じて信頼を積み上げ、一日一日を大切に邁進していければと思っています」(森下氏)
今後のビジョンとして、森下氏が強調するのが医療分野への本格参入だ。
「日本では高齢化が進み、医療分野におけるサプライヤーへの需要は確実に高まっていきます。『モノづくりで社会のカケはし』という企業理念に掲げているように、こういったニーズに積極的に応えていきたい。中型のフライス加工機を中心に、まだキャパシティもあります。既存事業を深化させながら、新規市場の開拓にも力を入れていきます」(森下氏)
常に革新を続け、業界のリーディングカンパニーとして新たな価値を提供し続けるモリックス精工。その挑戦は、これからも止まらない。
モリックス精工株式会社
多品種少量生産に特化した精密加工メーカー。工業機械・食品機械・半導体装置など幅広い業界の部品製造に対応。アルミ・SUS・銅・鋳物・難削材など多様な素材の加工実績を持つ。現在、医療分野への参入を積極的に推進中。
